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はむつなブログ

日々感じたこと、考えたことなど書いていきたいです。

マム

女子高時代の英語の授業。

70歳くらいに見えるベテラン英語教師。

女性。独身。

女学校時代の名残を感じずにはいられない、お固い英語の授業。

レトロという言葉では追いつかない、時代を感じるお召し物。

メガネのレンズは薄い桜色だった。

 

授業の始まりに決められた挨拶があった。

皆起立して背筋を正す。

教師のいつもの言葉を静かに待つ。

 

「グンモーニン、エブリワン!」

 Good morning,everyone!と先生。

 

「グンモーニン、マァム!」

 Good morning,ma'am!と生徒たち。

 

無言でお辞儀。

着席。

 

マァムとは勿論お母さん=momのことではない。

ma'amとはmadamの略で目上の女性や女性一般に対する丁寧な言い方、そして生徒が女の先生に呼びかけるときの呼称である。

男性でいうsir。

 が、そんなこと知りもしないあまり賢くない生徒たち。

「マムって何?は?どういうこと?おかあさん?」

最初は陰でそんなことを言いながら、

いつしか気にも留めず、一連のくだりをただ繰り返していた。

 

グンモーニンマァム!

グドアフタヌーンマァム!

無言でお辞儀。

 

頭を下げたときに毎度感じるアメリカの遠さ。

和洋折衷。

2年間続いた。

 

幸運にも、私たちはマムの退職の門出に立ちあうことができた。

花束と色紙を受け取ったマムは感激し、照れくさそうに、誇らしげに、そしてはしゃいでいた。

薄紅色のレンズの奥には私たちのような女学生がいた。